2016年、男性アイドルシーンに本格的な異変が起きている。これまで、人気グループの遷り変りや勢力図の変化などはあったものの、女性アイドルシーンと比較しても構造的に安定した地盤が固まっているかに見えていた。そんな不動のシーンをいま動かしているのが、「地方」「2.5次元」「アニメ」という3つの異色出自の“アイドル”グループたちだ。
【写真】ソロでも人気を得ているアイドルグループのメンバーたち
◆新たな道筋を切り開いた「地方」男性アイドル
まずは、これまで男性アイドルシーンでほとんど現れていない「地方」をベースにするスター。あえてそこを狙って活動していたのが、BOYS AND MEN(通称・ボイメン)だ。競合ひしめく東京ではなく、全国区のスターの影響力が東京ほど絶大ではない地方大都市を拠点にし、ライバルがいない環境のなかで地元に根ざした地道な活動からファンを広げて全国区に打って出ることに成功した。彼らが東京を外した理由のひとつには、芸能政治的な力関係に縛られにくい地方で自由に活動することも狙いにあったのかもしれない。まず名を上げて知名度を得る。そして、ある程度チカラをつけたら東京へ。そんな道筋を切り開いた。
ボイメンの結成は2010年だが、東海地域のローカル局でのテレビ出演やイベント出演などで知名度をあげ、現在では同テレビ、ラジオで多くのレギュラー番組を持つ。2015年5月のメジャーデビューシングル「ARC of Smile!」は週間ランキング6位。今年発売した2ndシングル「BOYMEN NINJA」は10.2万枚を売上げ、週間ランキング1位を獲得したほか、民放キー局の情報番組への出演など、メジャーシーンへ活動の幅を広げている。
一方、「2.5次元」から男性アイドルシーンに現れたのが、PC向けブラウザゲーム『刀剣乱舞-ONLINE-』がミュージカル化され、そのトライアル公演に出演した俳優たちで結成された、刀剣男士 team三条 with加州清光。シングル「刀剣乱舞」(1月1日発売)は週間シングルランキングで2位にランクインした。
これまでにも、いわゆる「2.5次元」といわれるゲームやアニメからミュージカル化、舞台化されるプロジェクトは数多くあったが、今回のように、その出演メンバーでグループが結成され、CDデビューするなどアイドル活動を行うケースは珍しい。刀剣男子のこの結果を受けて、「2.5次元」ジャンルからの同様の動きは今後も増えていきそうだ。2次元の新人5人組男性アイドル・DearDreamと、実際のキャスト(全員アミューズに所属する俳優)で結成されたDearDreamとが連動した2.5次元プロジェクトからも、シングルが3月16日にリリースされる。近いようで重なってはいなかった「2.5次元」シーンと男性アイドルシーンの境界が薄れてきているのかもしれない。
◆これまでのアイドルシーンにあいていた3つの“穴”
さらに、ときを同じくして「アニメ」からも男性アイドルグループが現れた。『おそ松さん』でイヤミと6つ子の声を担当した声優たちがシングル「SIX SAME FACES ~今夜は最高!!!!!!~」をリリースし、CDデビュー。彼らも週間ランキングで3位にランクインした。
『おそ松さん』関連では、アニメ大好き女子の7人組グループ・A応Pが歌うオープニングテーマ「はなまるぴっぴはよいこだけ」も昨年11月に発売されているが、週間ランキング17位と伸び悩んだ。その後に『おそ松さん』の認知度が高まったこともあるが、アニメの6つ子のアイドル的人気と、その声を担当する声優の人気の相乗効果が生まれ、6つ子とイヤミのシングルのほうはブレイクを果した。一般層も含むアニメファンとコアな声優ファンという異なる層を取り込んで、彼らの人気をより大きなものにしているのだ。
これらの3つの事例に共通しているのは、どれもアイドルシーンにぽっかりあいた“穴”に波及したということだ。BOYS AND MENは、エンタメの中心地である東京でも、お笑いタレントが活躍する大阪でもなく、地域や場としての“穴”であった東海地域から地盤を固めて人気を徐々に高めていった。
刀剣男子は、2.5次元ミュージカルというコンテンツと、俳優たちのそれぞれの人気が高まっているにも関わらず、実際にグループを結成してシングルリリースをしたり、そのシングル特典と舞台チケット販売をリンクさせることが少なかったという組み合わせの“穴”から登場した。
そして、社会現象ともいわれている『おそ松さん』は、2次元のコンテンツであるが、従来のアニメ人気と、声優たちの人気、そして6人のキャラクターや関係性がリアルで活き活きと描かれていることから、3次元アイドルファンをも取り込んだ。しかし、『おそ松さん』の制作が始まった頃は、明確なターゲットが見えていなかったという。明確なターゲットがないということは、新たなターゲットを模索しながら作品を制作できる。ターゲットの設定が固定されておらず、良い意味での“穴”があったからこそ、従来の2次元ファンを超えて人気が拡大したとも考えられる。
これらの異色出自の男性アイドルたちは、従来のアイドルとは異なるファン層を抱えており、いわゆる“アイドルファン”層に留まらない一般層をも含めた新たな広がりを見せた。彼らを“純粋”な男性アイドルグループと同じ括りで見ていいのかという議論はあるかもしれないが、CDをリリースし、アイドル的な人気を得てファンを拡大しているのは事実であり、シーンは活性化している。こうしたグループの登場と新たなファン層へのアプローチにより、2016年の男性アイドルシーンがますます盛り上がりを見せていくことは間違いないだろう。
(この記事はエンタメ総合(オリコン)から引用させて頂きました)
次回もお楽しみにね。
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